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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)1241号 判決

上告人

横溝物産株式会社

右代表者

横溝澄三

右訴訟代理人

河原太郎

被上告人

右代表者法務大臣

田中伊三次

右指定代理人

福島豊

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人河原太郎の上告理由一ないし三について。

原判決は、訴外株式会社横溝商店は、昭和三五年五月二五日解散し、同日租税債務を除きその営業の全部を上告人(控訴人)に譲渡したのであるが、被上告人(被控訴人)は、右訴外会社に対し、昭和三五年五月三一日から同年九月五日までの間に、昭和三一年四月一日から同三四年三月三一日にいたるまでの三事業年度について原判決引用の第一審判決添付別表記載のとおり、法人税については本税の更正決定ないし再更正決定あるいは加算税・利子税の賦課決定をし、源泉所得税については本税および加算税・利子税の賦課決定をし、それらの税額の合計が二六二万二、九三〇円である(利子税はいずれも各事業年度終了後二ケ月の翌日である各年六月一日から昭和三五年五月二五日までに生じたものである)との事実を確定したものであることは判文上明らかである。

原判決は、昭和三五年五月二五日における訴外会社の右営業譲渡は、被上告人の有する前記租税債権を詐害する行為であると判示し、論旨は、前同日には被上告人の判示課税処分が未だ行なわれていないから、被上告人の判示租税債権は未だ発生していないと解すべきであり、従つて、訴外会社の判示行為は右租税債権を詐害する行為に当らないから原判決であると主張する。

しかしながら、租税債権は、法律の規定する課税要件事実の存在によつて当然に発生するものであつて、国がなす課税処分は、単にその税額を具体的に明確にするものにすぎないと解すべきである。前記営業譲渡当時は、租税債権発生の基礎である各事業年度は終了しているから、被上告人の課税処分が未だ行なわれていなくても判示租税債権が既に発生していると解した原判決は相当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。

同四について。

判示租税債権詐害の意思に関する原判決の事実認定は、原判決挙示の証拠により肯認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 柏原語六 田中二郎 下田三郎 松本正雄)

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